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高校1年の2学期
インターナショナルスクールから転校した
最初は同じクラスでは無かった
出逢ったのは放課後の帰国子女対象の補習クラスだった
彼女は中学2年の時帰国していて既に3年程経っていたが
日本に住むつもりが無かったのか現地で日本語学校にも
通っていなかった
ロスで生まれ育ち父親はアメリカ人なので
家でも4才年下の弟と父親には英語
母親だけには日本語という風だったので
話す事には不自由しなくても読み書き漢字は
高校1年になっても大変そうだった
俺は日本生まれだし親も日本人だし
小学校3年から行ったシンガポールでも
日本人学校へ行っていたし
6年生からのNYでも現地補習校で一応受験に備えていた
夏休みの度におばあちゃんちに1人預けられてたので
帰国したばかりの時も電車やバスに乗るのも
不自由しなかった
補習クラスは5人程で学年もバラバラ滞在期間も
国も就学能力もバラバラだった 
ブラジル日系 アジア系 中高一貫なので兄弟もいた
実は俺は日本語は大丈夫だったが数学が遅れてたんだ


2年になり彼女と同じクラスになった
古文の授業は隣に座らされ2人は先生からも外人扱い
皆に『さっちゃん』と呼ばれる彼女は
出逢った当時はパンパンだった顔もハーフらしい
彫りの深さと165cm以上の背になり大人びていた
(帰国した頃は体型もパンパンだったんだぜ)
中学から一緒の奴が写真まで見せてくれた
悪いが大笑いしてしまった

横で先生の読む源氏物語を遠ーい眼をして
外国語の様に聞いている彼女と居る事は嫌じゃなかった
心地良かった 何故か癒された 時々 何重にも有る
言葉の意味や古いしきたり 考え方等を英語で説明する
「昔の日本の女の人ってガマンしてたんだねぇ〜」
…好きだから身を引く…ひたすら待つ…
迷惑がかかると自分の感情を押し殺す
そんな部分
このアメリカンなお嬢ちゃんにもあるのかなぁ
少し興味を持ち始めていた
気が付けば補習帰りは必ず家の前まで送って行き
食堂ではさり気なく彼女の為に椅子を引く俺
ハグしたり2人の周りだけアメリカンな感じだった

ある日彼女は学校を休んだ
「仕事じゃないの?」「仕事してるの?」
「モデルだよ」女子がファッション雑誌を開けて見せる
そこにはにはますますほっそりとして大人びた
『さっちゃん』が『ブリジッタ』と言う名前で載っていた
彼女の本名は Sara Brigitta O`Conner
古文のノート持って行ってやろう

補習と部活で何時もよりは遅い時間に
彼女の家のインタフォンを始めて押した
表札には小林
自分にはおよそ似つかない『小林 幸』と言う日本名を
さっちゃんはいたく気に入っていた
まるで来るのが判っていたかの様に扉を開けに来た
彼女は「上がれば…?」と言って2階へと
振り返りも返事も聞かずに先に行く デレ〜っとした
グレーのスエットの上下の背中にはDogers
(オイオイ… 俺はやっぱりヤンキース)
玄関には異様に大きなバスケシューズ 誰のだ?

階段を上がり彼女の部屋に一歩入り来た事を後悔した
「今日一緒だったんだ」「送って来て遊びに来た」
「ノラだよ」…知ってるよ「oh! タツじゃない」
嬉しそうにハグまでして来ようとする すんな!
誰のせいで転校したと思ってんの?
俺はかすり傷にしろお前に刺されたんだぞ

 

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