遮音、遮視スクリーンで囲まれた2人だけの空間に
彼の熱い息遣いとぴちゃぴちゃという水音が充満している。
右の人差し指からは消毒液、中指からは潤滑液を
バキュームにした左の中指を、その3本すべてを麹君の肛門に捩じ込みスライドさせる
彼の性器は3度、私の口に含まれ呆気なくフィニッシュを迎える。
「あーああっーん!」以外に色っぽい声とともに彼の体から力が抜けて来る。
私はロボのくせに案外意地悪かもしれない。『又、いっぱい出ましたねー。』
手のプロテクトスキンを剥きながら言ってみる。素早くズボンを履かせ毛布を掛ける。
不意に上着の裾を掴まれた。麹君を見ると上気した顔にウルウル目で私を見上げ
「キ…キスして」と小さな声で言う。『えっ…』これは想定外で業務外だ。
『…いいよ』もっと彼の精子を味わっていたかったけど唾液を消毒液にかえ彼に近づく。
『これはお仕事じゃないですからね』「そんな事どうでもいいじゃない」
彼は大胆にも私の首に腕を絡め唇を引き寄せる。
あーっ私は勤務時間中に患者さんと何をしているのだ!!
彼の思いが舌先から伝わり彼の叫びが聞こえる…もっともっと…と
夢中になり舌先を奪い合い押しつけ合いながらパジャマの上から捜し当てた乳首をつまむ
同時に橋本さんの尿意センサーが作動する。『ゴメンネ,行かなくちゃ…』
「他の人にも僕と同じような事するの?」『うーん,お仕事だからね。して欲しくない?』
「ダメ。嫌!僕だけじゃなきゃイヤ」『じゃあ,お口は使わない。それでいい?』
「うん。しょうがない。何時に終わるの?」『終わらないよ。眠らないし』「えっー」
『後で又来るからね。いい子でネンネしててね。』 「はーい」
廊下を歩きながら感情の高まりに因る体温上昇を確認する。
生まれて始めてのキスだった事は黙っておこう。何故,乳首を触りたくなったのだろう。
2−3日は動けないがその後はハードギブスとハードプロテクトで歩行訓練が始まり
麹君は1週間もすれば退院してしまう。そうすれば彼とはもう会えない。
私はこの病院外で暮らした事がない。又、学校に戻り彼は私の事など忘れてしまうのだろう。
それでもいい、その方がいい。私はこの病院のオシモ2なのだから。あー恋愛ってこういうことなのか。
頭の中がぐるぐるして彼の情報と自分の感情が入り乱れる。
麹君が退院すれば私はオシメから初期化を言い渡されるだろう。せめて彼が通院する間,定期検診まで
私の中から麹君の記憶を消さないで。いや見知らぬ人になっても何度でも恋に落ちてみせよう。
でも感情データを破棄されたら私は只の労働マシンになり長谷川 麹を認識、記憶は出来ても
愛しく想い,愛する事はできない。彼の声を甘く感じる事も出来ない。そこら辺の自動販売機と同じだ。