1(b)

キッチンテーブルの前に立つあきら
あきらの背後にはべたっとCalvinが張りついている
あきらより少しだけ背の高いCalvinの
手はあきらの腰に後ろからしっかりまわされ顎は片方の肩にのっている
あきらは小さな鋏でバッヅを崩してゆく
ZIGZAGのrollingpaperコーナズカットを左手で1枚取り
右手は何故か古い定期券で集め上にのせていく
Calvinの手が解かれあきらの後を引き継ぎ
きゅっとひねったかと思えばもうきれいにjointが巻けている
その間にもあきらの手は残りを片付けまるで二人羽織を見ているようだと
テーブルのこちら側で勝弥は思う いや千手観音に見えて来る
端の糊付部分をあきらの口元へ持っていけば赤い尖った舌先でツーっとひとなめする
ぞっとするような色気を一瞬まとい口元に銜えさせられ 火をつけられる
ここはあきらとCalvinの住居家兼事務所兼スタジオの家
かつやの隣りにいる静喜はあきらのデザイン事務所でプラクティカルトレーニング中
しーちゃんはかつやに一緒にここに住まないか?と持ちかけた
来てみて驚いた この家からはベストスポットが目の前にせまる
毎日でも海につからないと生きた心地のしないかつやにとっては天国だ
カレッジにも近いし 好きな人と暮せるのだし
真ん中のキッチンとリビングを挟んで大きなベッドルームが2つ
張り出したデッキ下のガレージを事務所に改築してある
実はCalvinとあきらは最近、上海へ行く事が決まった 
しーちゃんはあきらからここの事務所も任される

けたけたとあきらがCalvinの腕の中で笑っている
まわって来たjointをおもわずいつもhomegrownのつもりで思いっきり吸い込み
ゲホゲホになったかつやを横目で笑いながら タバコは吸えない筈のしーちゃんは
まるでスリムなシガーの様に指にはさみ優雅に燻らせている

ナパバレーワインを飲むあきらを背後からがんじがらめに絡めCalvinはあきらの耳を舐める
こちら側にいる2人ににっと笑いかけCalvinが言う「したくなっちゃうんだよねー あきらは」
大人しくなったあきらは引きずられる様にベッドルームへと拉致される

夕暮れの赤い光が窓を染める ふと外に目をやれば目の前は太平洋
水面は金色にキラキラと輝く
かつやはしーちゃんをデッキへと誘う 手すりに乗り出すしーちゃんを
後ろから抱きしめ大きな毛布でスッポリと包み1つになる 顔に痛い位の浜風の中
沈みゆく太陽をただただ美しいと思って眺めていた
ふと微かに端のベッドルームからなまめかしい声が風に乗る 刹那そうなあきらの声に
一瞬にして体に熱が籠る かつやの腕の中のしずきが一瞬ビクっとなりそして力が抜けてゆく
抱きしめる腕を強くし耳元へ熱くささやき懇願する「ベッド行こう?…」
くたっと力の抜けたしーちゃんをひょいと抱き上げベッドルームへ運ぶ
わざとドサッとベッドに放り投げれば うるうると不安な眼で見上げられる
女の子は結構お相手させてもらったが男は始めて しーちゃんに至っては何もかも始めて
ふといい香りのもとを捜せば窓際のアロマキャンドルはバニラの香り
ラジオはまったりと濃厚なR&Bステーション ベッドサイドにはローションとコンドーム
こんな事用意するのはあきらさんだよな きっとしーちゃんはあきらさんにも相談したんだ
大丈夫だよ ちゃんとこんなに好きだから かつやはしずきの前でシャツを脱ぎ捨ててから
しずきに覆い被さった そう最初、静喜は勝弥の体にひかれたのだ

 

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